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ボトックス注射は、表情ジワの改善や小顔効果、あごをシャープに尖らせるなどの効果があり、手軽にできるプチ整形として近年では多くの女性が利用するようになっています。

しかし、ボトックス注射の効果が期待できるのは美容整形におけるものだけではありません。一部の疾患の中には、ボトックスを使用して治療できるものがあるのです。

 

こちらでは、ボトックスの美容目的における働きだけでなく、病気の治療という面での効果・働きを解説していきます。美容整形では保険適応外ですが、適応になる疾患・症状についても説明しますので、ぜひ読み進めてみて下さい。

 

 

ボトックス注射による治療

ボトックス注射が可能な病気

まずボトックス注射とは、ボツリヌス菌を人体に無害な成分に加工して筋肉に注射することで、神経を麻痺させて筋肉の異常な収縮を緩和したり、筋肉を弛緩して関節を動かしやすくしたりするものです。

ボツリヌス菌と聞くと少し怖いですが、菌自体を注射するのではありませんので感染等はしません。この、筋肉弛緩効果により、凝り固まって深いシワを形成している筋肉をゆるめて表情ジワを改善したり、筋肉が固まって動きにくい手足を動かしやすくする事が期待できるのです。

具体的に効果があると言われている疾患は以下の通りです。

 

・眼瞼痙攣:両側の目の筋肉に痙縮が生じることで、瞼がピクピクしたり眩しいと感じたりする症状です。疲れにより瞼が痙攣する事がありますが、それが一日中続いているような状態です。

 

・片側顔面痙攣:顔面神経が脳内で圧迫されることで、顔の筋肉が痙攣し続けてしまう症状です。目の周りだけだった痙攣が口元などに徐々に広がり、顔が引きつる、ゆがむといった症状が出てきて自覚し、受診する方が多いです。

 

・痙性斜頚:首や肩の筋肉の異常な緊張により、首がねじれたり傾いてしまう症例です。現在は原因不明のため、ボトックス注射などで筋肉の弛緩を緩和して対処していく症状になります。

 

・下肢痙縮・上肢痙縮:脳卒中を発症された場合に、後遺症として手足の麻痺が残るだけでなく、筋肉が以上に緊張して手指を握ったままになる・肘が曲がって固まってしまう・脚が突っ張るという症状が出る場合があり、これを痙縮といいます。

 

・小児脳性麻痺の下肢痙縮に伴う尖足:小児脳性麻痺により起きた下肢の痙縮に伴い、ふくらはぎからアキレス腱の筋肉が痙縮し、つま先立ちのような足の形になってしまった(尖足)変形の事です。立った時にかかとが床につかない状態です。

 

・発汗異常(脇汗):原因は不明で、脇に異常なほどの汗をかき、日常生活に支障をきたしかねない症状です。ボトックスを注射する事により、汗を出す神経物質の伝達を阻害して発汗を抑制することができます。

 

以上となります。

ボトックス注射は、これらの痙縮・緊張している筋肉に注射することで筋肉の弛緩を行い、その症状を和らげたり解消することができます。

しかし、ボトックスを打てば手足が自由に動くようになるというわけではなく、固くなった筋肉を和らげて動きやすくすることでリハビリを行いやすくするものであり、あくまでリハビリと併用していく事が大切になります。また、注射の効果は施術後すぐではなく2~3日後に徐々に出てきて、3~4カ月持続すると言われています。

 

その後徐々に施術前の症例が出てくるので、反復した注射が必要になります。ただ、脇の発汗異常に対しては、平均的に4~9カ月間効果が持続するので、春先など、汗をかきやすい時期の前に注射すれば、7~8月の暑い時期に汗を気にせず過ごす事ができる可能性があります。

 

 

ボトックス注射が保険適応になる病気

ボトックス注射は、一般的に美容整形では保険適用外になります。前述した中の、眼瞼痙攣・片側顔面痙攣・痙性斜頚・上下支肢痙縮の治療には保険適応でしたが、最近では脇の多汗症に対しても適応されるようになりました。

ただ、脇の汗が気になるという症例にすべて適応されるわけではなく、「原発性腋窩多汗症」と診断された場合が保険適応になります。これは、多汗症がもしも一時的な体調の変化や薬などの副作用によるものであるならば、原因となる疾患を治す事が優先だと考えられるからです。

そして、「原発性腋窩多汗症」と診断されるのは「原因不明の過剰な汗が半年以上前から続いている」という条件に加えて、以下の6項目のうち2項目以上に当てはまる場合です。

 

・両側性かつ左右対称に多く汗をかく

・多汗により日常生活に支障がある

・週1回以上、多汗の症状が起きる

・25歳未満で発症した

・家族・親戚に同じような症状の人がいる

・睡眠中は多汗の症状はない

 

以上の2項目以上に当てはまれば「原発性腋窩多汗症」と診断される可能性があり、その改善のためにボトックス注射を受けるのであれば保険適用となります。

ただし、適用されるのはグラクソ社のボトックスのみなので注意が必要です。日本では、ボトックス注射に使用される薬剤の中では、アラガン社のボトックスがその安全性・有効性ゆえに唯一厚生労働省の認可を受けています。

保険適用外にはなりますが、安全性や効果を考慮するとグラクソ社の物よりも優れていると言えるかもしれません。「ボトックス注射」といっても、クリニックにより使用する薬剤が違いますので、保険適用内であるかどうかは事前にきちんと確認する事が必要になります。